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僕「小学校で」女「つかまえて」 2 非エロ体験談

350:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/03(火)21:22:45.17ID:l1nUAkN1O

僕「な、何が……?」



確認するように、問いかける。



女「帰っちゃやだ……」



返ってきたのは僕が予想した通りの言葉だった。



女「今日はお家に誰もいないの、だから……だから……」



大学生のままの彼女がこのセリフを言えば、僕も今とは違う意味で捉え、彼女を抱きしめていたんだろう。



僕(でも……)



女「一人は嫌だよ……寂しいんだよ……」



彼女は怯えていた。



遊んで、お友達とバイバイしたくない。それだけのはずなのに。



それだけじゃないのが、やはり僕にはわかってしまう。



352:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/03(火)21:40:21.79ID:l1nUAkN1O

僕「女……」



女「お父さんもいないし……お母さんもお仕事増やしちゃったから夜はいなくなっちゃうし……」





女「一人でお留守番してご飯食べるなんてやだよ……いやだよ……」



彼女は泣きながら、僕の首筋辺りに抱きついていた。



ぬるい涙がじゅっ、と僕の頸動脈に吸い込まれているような感覚だ。



女「この記憶だと……聞こえちゃうんだよ。二人が言っている事全部、理解できちゃうんだよ……」



女「お金の事、住居の事、私の事……難しい単語も今の私にはわかっちゃうんだよ……!」



女「もう一度記憶と同じ事を体験するなんて、つらすぎるよ……」







355:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/03(火)21:53:01.12ID:l1nUAkN1O

記憶も中身も全部。



子供のままだった昔。



彼女はこんな風に泣いていなかったのかもしれない。



記憶と半端に残っている知識のせいで、目の前の彼女はこんなにも子供みたいに泣いている。



知ってしまっている分、子供よりつらい泣き方なんだろう。



僕に抱きついて大声で泣いているその姿は、小学一年生のままの彼女だった。



泣いて、泣いて、泣いて……。



ずっと僕はその間、ただ彼女の頭を撫でてあげる事しかできなかった。



女「……」



女「ありがとう……」



泣き声が小さくなり始めた頃、彼女から感謝の言葉が聞こえた。





357:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/03(火)22:02:49.80ID:l1nUAkN1O

僕「……落ちついた?」



女「うん……。あははっ、グスッ。シャツたくさん水吸ってる」



鼻を啜りながら、彼女はいつもの雰囲気に戻っていく。



笑いながら元気な声を出そうと一生懸命な彼女に。



僕「もう大丈夫?」



女「うん……多分、平気だから。ありがとう僕ちゃん」



ぎこちなく笑っている彼女。



そんな彼女に僕は、まだ少しカップに残っていた彼女のココアを渡してあげる。



僕「はい。冷めちゃってるけど……」





359:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/03(火)22:13:49.16ID:l1nUAkN1O

女「ありがと……」



カップを受け取り、そのままコクッと、小さく彼女の喉が鳴る。



僕「どう?」



女「……なにこれあまっ。これ僕ちゃんのカップじゃん」



僕「え……あ……」



女「くすっ。わざとじゃないんだね」



僕(やっぱり全部見抜かれてるんだな……)



僕はわかりやすい。



女「でも……」



僕「……?」



女「僕ちゃんがくれた物だから、おいしい……」



素直になった時の彼女も……すごくわかりやすい。





360:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/03(火)22:23:34.51ID:l1nUAkN1O

同じ人が作ったココアを、僕たちは同じカップで飲んでいる。

二人で同じ物を飲んでいるはずなのに、僕たちはお互いに違う味を感じていた。



僕はそれを不思議とは思わなかった。



女「こんなの笑顔で飲んでたんだから……本当に僕ちゃんて甘いの好きだよね」



僕「女が作ってくれたから、何でも美味しいんだよ」



女「……ばーかばーか」



僕「悪口も一年生かよ……」



女「ふふっ。僕ちゃんのばーか」



僕「じゃあ女だって……ばか……だよ」



女「そんなに優しく言われても悔しくないよーだ、ばか僕ちゃん。ふふっ」





無邪気に笑う僕たちの笑顔は、ほんの少しだけ昔に戻った気がした。



こうして、僕はお家に帰って行った。



笑っている彼女の姿が、道端の外灯に照らされて優しく揺れていた。





362:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/03(火)22:31:50.71ID:l1nUAkN1O

女「おはよう、僕ちゃん」



僕「おはよ」



朝一番で挨拶をしてくれる彼女。



僕(目の辺りに、新しく泣いたような痕跡は無い、か)



ちょっとだけ安心をする。



女「んふふ〜」



僕「?」



座ってから一番、彼女はこっちに笑いながら顔を近付けてくる。



僕「な、何?」



今回みたいに唐突に笑顔を向けてくる時は、答えの予想がつかない。



女「はい、これ!」



手渡されたのは薄い紙袋に入った……ノートのような物体だった。



中身まではまだわからない。





365:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/03(火)22:39:13.57ID:l1nUAkN1O

僕「なに、これ」



ガサガサと袋を開けようとすると……。



女「まだだめっ。帰ってから!」

すぐに彼女にその手を止められてしまう。



僕「どうしても?」



女「どうしても!」



僕「まあ、何でもいいんだけどさ」



わざと興味のないフリをして、僕はランドセルにそれをしまった。



女「うん!」



本当は彼女の言葉を聞いた瞬間から、家に帰りたくて仕方がなかったけど。



その日はなんだか、早足で家に帰っていた記憶がある。





366:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/03(火)22:50:22.78ID:l1nUAkN1O

自宅のテーブルで僕は袋を乱暴に開けている。



妹「おーちゃん、おーちゃん」



妹が甘えてきても、今はダメ。



テレビをつけてあげると、妹はすぐにそっちに顔を向ける。



それはそれで悲しかったけど。

僕「今は袋だ、袋」



中から顔を出したのは……受け取った時から感じていた通り、一冊のノートだった。



薄い紫色をした、綺麗な表紙のノートだ。



授業に持ってくる感じの物では、もちろん無い。



僕「……」



その表紙には彼女の字で、デカデカしながらも整った字でこう書かれていた。



『交換日記』





367:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/03(火)22:55:41.02ID:l1nUAkN1O

女『こんばんは。昨日はありがとう。おかげで今こうして落ち着きながらこれを書けちゃってます』



砕けた感じの文章。



何色ものカラフルペンでデコレーションされている。



うまく表現できないのが残念だ。



女『でもやっぱり夜にメールも出来ないのは寂しいから……こうして勝手に交換日記を始めちゃってます!』



僕「日記、ねえ……」



居間にはテレビから流れるアニメの主題歌と、それを歌おうとはしゃいでいる妹の声だけが流れている。





369:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/03(火)23:10:29.38ID:l1nUAkN1O

昨日、僕がずっとここにいる、今日は帰らない。



その言葉を聞いて一瞬驚いたような表情の後、彼女は笑顔で言ってくれた。



女「ありがとう。でも、もう大丈夫だから……もう元気だから」



嘘をついている表情ではなかった。



僕は彼女の言葉をそのまま信じ、家に帰っていった。



夜八時に帰るだけで両親に怒られるとは思わなかったけど……。



僕「あのあとこれを書いていたのかなぁ……」



涙の痕ができていない理由がわかった気がする。



僕「さて、何を返事にすればいいのか……と」



鉛筆を取りだしノートに向かう僕は、一年生になってからのこの半年間で、一番熱心な顔をしていたんだと思う。





371:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/03(火)23:17:10.76ID:l1nUAkN1O

僕「おは……」



「ね、今日の放課後さ……」



「だから女ちゃんも……」



女「んー、どうしよう。……あ、僕ちゃんおはよう」



机の周りには女子が数名、彼女を取り囲むように立ち塞がっている。



僕(全く、モテちゃって困るよ本当に)



こんな冗談言っても、周りにはポカーンとされ彼女だけがツッコミを入れてくれるんだろう。



そういう冗談が一年生に通じるとは思えなかった。



僕(退いてくれないと座れないんですけど……)



女子の壁が、朝から僕の邪魔をする。





372:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/03(火)23:24:05.52ID:l1nUAkN1O

「ねえ、僕くんも放課後参加しない?」



「そうだよ。みんなで遊ぼうよ」



僕「なんの話?」



途中から話に入った僕は、何の事だか内容が見えていない。



女「放課後、学校の中でかくれんぼをするんだってー」



小さな体の僕たちにとって、広すぎるくらいのこの校舎。



その全部を使って何人かでかくれんぼをしようという企画だった。



僕「ああ、小学生がよく考えそうなアレね」



女「……おんなじ!小学生でしょ、まったく!」



記憶に関する事で口を滑らせると、彼女は途端厳しい口調になる。



僕「ご、ごめんてば」



「どうするのー、僕くんもかくれんぼする?」





376:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/03(火)23:33:46.70ID:l1nUAkN1O

僕はチラッと彼女の方を見つめてみる。



女(……ふふん)



と、心の中で笑っているような妖艶な目付きでこっちを見つめ返している。





僕(一年生ができる表情じゃないよアレは……)



「僕くんは参加するの?」



僕「まあ、暇だから……いいかな?」



「なんか言い方がカッコつけてる〜」



女「僕ちゃんは子供だから、ふふっ」



僕(大学生が一年生の言葉遣いなんて簡単にわかるわけないだろ)

わかって言っているであろう彼女に、直接言えないツッコミ。



それらは全部心の中で彼女にぶつけている。





……結局僕も彼女も、放課後のかくれんぼに参加する事となった。





377:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/03(火)23:45:10.26ID:l1nUAkN1O

放課後、夕焼けの色が教室に差し込んでいる。



机の上に残っている、いくつかのランドセルがみんな赤色に染まっている。



その情景の中に僕たちはいた。



「じゃあルール説明するからね。今日使える場所は一階だけ」



「それ以外は普通のかくれんぼと一緒だよ〜」



「三十分で全員見つけられなかったら、鬼の負けー」



僕と女と眼鏡ちゃん。

他の男の子が一人、女の子が二人の合計六人。



女「頑張ろうね眼鏡ちゃん」



眼鏡「う、うん……!」



横から刺さる眼鏡ちゃんの視線がなぜか痛い。





379:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/03(火)23:50:49.19ID:l1nUAkN1O

「じゃーんけーん……ぽん!」



女「わ……」



「女ちゃんが鬼ー」



「じゃあ百数えたら探しに来てね!」



眼鏡「お、女ちゃん……」



女「じゃあ数えるよ〜。いーち、にーい、さーん……」



「見つかったら教室に戻ってくるんだよ!」



僕「女なんかに見つかるか〜」



女「……言ったな。ろーく、なーな……」



各々が言いたい事を言いながら、バラバラと教室から出ていく。



僕(ふふん……)



僕には一つの考えがあった。





381:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/03(火)23:59:19.61ID:l1nUAkN1O

この学校の一階の間取りはこうだ。



まずは東側に小さな玄関がある。



一年生と二年生はここから学校に入り、隣り合った教室に入っていく。



外に出る事は禁止なので、一番端にある一年生の教室が実質のスタート地点となる。



そして奥に進むとに職員室、校長室が見えてくる。



その向かいに男子トイレに女子トイレが並び、ここから先が正面玄関になる。



性別の問題でトイレに隠れるのも禁止なので、東側に隠れる場所はほとんど無い。





382:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/04(水)00:10:30.01ID:acBaJVZBO

正面玄関を挟んで次は西側。



こちらには図工室や保健室、更には音楽室や放送室まである。



隠れるのも探すのも、多分西側が探索場所の中心になるだろう。



女「きゅうじゅはーち、きゅうじゅく……」



僕はあえて西側には行かず、教室横の壁に張り付いて彼女がみんなを探しに行くのを息を殺しながら待っていた。



女「ひゃーく!」



勢いよく、西側に近いドアから彼女が教室を飛びして行く。





383:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/04(水)00:19:07.58ID:acBaJVZBO

それとは反対の東側のドアに僕はいる。



学校一番端に隠れていた僕は、難なく入れ替わる事に成功した。



飛び出した誰もが最初には見る事はない、ちょっとした四角。



ズル賢い大学生の作戦だ。



僕「ふふん。後はしばらく教室にいれば……」



女「あ、やっぱりいた。僕ちゃん、み〜つけた」



僕「げっ……」



女「そんな事だろうと思ったよ。子供の遊びでこんな手を使うなんて……くすくす」



僕(バ、バレてるの……)



開始十秒で彼女に一番で見つかって笑われている僕の記憶は、今日の放課後を多分忘れない。



僕「悔しすぎる……」



女「あははははっ」





384:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/04(水)00:30:30.53ID:acBaJVZBO

結局、僕の一つの考えは簡単に見破られてしまっていた。



大学生の彼女が狭い学校内を探すなんて容易な事らしくて……。



眼鏡「あ、僕ちゃ……」



すぐに次の犠牲者がやってくる。



眼鏡ちゃんだった。



僕「見つかったんだね」



眼鏡「うん。僕ちゃんも……?」



僕「まあ、ね」



眼鏡「こんなに早く?」



僕「う、うん……あはは……」



眼鏡「?」



悪気が無い彼女と違い、眼鏡ちゃんは悪意が無い。



その分僕は心の中でツッコミを入れる事もできない。



僕(……?)



僕(なんか違和感というか、モヤモヤ……?)





385:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/04(水)00:45:51.71ID:acBaJVZBO

眼鏡「女ちゃん、すごいよね。あっという間に見つかっちゃった」



僕「そ、そうだねー」



眼鏡「ね……」



僕「……」



眼鏡「……」



二人だけの教室。



窓から射し込む光の様子が変わった様子はあまり無い。



沈黙で時間が止まっているような……そんな錯覚さえする。



「ほらー……早く……」



「パス出せパスー……」



遠く。



遠くの校庭からは他の生徒達が騒いでいる声がする。



僕も隣にいる彼女も、同じ音をきっと聞いている



僕(よく考えたら、ここにいる眼鏡ちゃんは本当の一年生なんだもんな)



僕(今までは何かと女が間に入ってくれてたけど……)





386:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/04(水)00:53:51.00ID:acBaJVZBO

女の子と二人きり。



眼鏡ちゃんとは比較的よく話していたけれど、それは中学生辺りの事。



一年生の女の子と何をどういう風に話していたのか。



僕の記憶には何も残っていなかった。



僕(何か話さないと……)



変に気だけを遣ってしまう。



眼鏡「あ、あの……」



僕「は、はい?」



震える空気。



眼鏡「ぼ、僕ちゃんて……さ。女ちゃんの事……すき?」



僕「お、おお?」



眼鏡「うん、いつも一緒にいるから……ね」



僕(一年生ってこんな会話したっけか?)





387:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/04(水)01:05:10.84ID:acBaJVZBO

さすがに一年生の女の子に問い詰められてドキマギはしないけれど。



……彼女の事を聞かれたら焦ってしまう。



僕「す、好きなわけないよ!女の事なんて!」



焦ったせいで、つい呼び捨て。



眼鏡「で、でも二人でいつも楽しそうにしてるから……」



僕「隣に座っているからよく話すだけさ。好きなんてそんな事……」



少なくとも大学で知り合ってから数ヶ月、僕は彼女の事を恋愛的に好きだった。



でも長く一緒にいるうち、その気持ちは何だか……妹や年下に抱くような、優しさのような感情に変化していった。



僕(……とは自分で思っているけれど)





388:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/04(水)01:13:25.40ID:acBaJVZBO

女「ふい〜。大漁大漁」



話の途中、全ての獲物を狩り終わった彼女が帰って来る。



「女ちゃん強いよー」



「あっという間だっもんな」



女「もっとあっという間な人もいるけどね〜」



僕(はいはい……)



いつからかな。



いつの間にか、僕の方が弟みたい扱われるようになってしまって……。



今は、この感情がどうなっているかよくわからない。



ただ……。



女「じゃあ、次は五秒で見つかった僕ちゃんの鬼ね!」





389:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/04(水)01:24:25.17ID:acBaJVZBO

僕「い、いいんだよ。そんな事は一々言わなくて!」



「え〜、僕くんダサー」



「五秒って……」



女「じゃあ鬼ちゃんが鬼〜」



彼女は、確実に僕だけに笑ってくれている。



今はそれだけでいいんだ。



僕「……鬼ちゃん数えるからな。いちにさんしごろくななはちきゅうじゅういちじゅうし!」



「は、早いよバカ!」



「逃げろ〜!」



「ほら、眼鏡ちゃんも!」





390:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/04(水)01:27:57.24ID:acBaJVZBO

眼鏡「あ……」



女「ちゃっかり数え飛ばしてんなー、バカー!」



……



僕「……ひゃくっ!」



多分百秒を十秒くらいで数え終わっただろうか。



僕も元気に、教室の外へ飛び出していく。



僕「よし。絶対見つけてやる!」



今はただ、放課後の校舎を走り回っているだけで楽しかった。



懐かしいあの日に、本当に帰ってきた気がした。





女「……」



そんな僕の背後、教室で笑っている彼女を見つけだせたのは、タイムリミットの三十分が過ぎてからだった。





391:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/04(水)01:36:37.91ID:acBaJVZBO

女「あっはっはっは!」



僕「……」



女「いや〜、ごめんごめん。おかしくて、楽しくて……くくっ」



眼鏡「ぷっ……」



大人しいはずの眼鏡ちゃんまでもが笑っている。



女「だって全くおんなじ手で気付かないんだもん。僕ちゃんって……おバカさん」



僕「人のアイデア勝手に使うのはズルいぞ……」



得意に、教室で仁王立ちしている彼女を思い出すだけで……。



今日は負けた気がする。





392:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/04(水)01:47:40.54ID:acBaJVZBO

女「じゃあ、バイバ〜イ僕ちゃん」



僕「んー……」



今日の笑顔の種類はちょっとだけ違う気がする。



僕「また明日ー」



僕も帰ろう、と女の家とは反対側を向こうとした瞬間……。



女「ちょい待ち。何か忘れ物してない?」



僕「?」



本気でポカンとしている僕がいる。



女「もう……日記」



僕「ああ」



思い出したように、僕はランドセルから日記帳を取り出す。



僕「はい、これ」





393:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/04(水)01:55:29.03ID:acBaJVZBO

女「ん……ありがとう」



女「……」



ギュッ。



まだ微かに青紫が見える夜の下……ひんやりとした風に吹かれながら、日記を抱きしめている彼女の姿は……。



やっぱり可愛かった。



僕(……涼し)



もうすぐ夏は完全に終わり、肌寒い秋が来る。



地元の寒い空気を思い出させてくれるような、そんな風が吹いている。



女「ん……さむっ」



彼女の声に反応して、僕の意識は戻ってくる。



僕「寒いなら、もう家に入りなよ。僕も帰るからさ」



いつまでもここにいる事も出来ない。





394:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/04(水)02:04:25.99ID:acBaJVZBO

女「ん……また明日ね」



僕「明日は土曜日だから学校休みだよ」



女「……」



僕「あ、今はまだ休みじゃ無かった時か」



女「何年一年生やってるのよ」



僕「一年と、今日で半年かな」



女「ふふっ……私も」



僕「……」



女「……」



帰らないといけない。



今帰らないと僕は……。



僕「ま、またね!」



女「……バイバイ」



僕(多分、僕はまた彼女が作ってくれたココアを飲んで落ち着いてしまうから)



一年生である事が、少しだけもどかしいのは外で遊べる時間が少ないと言う事だけだった。





395:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/04(水)02:17:36.19ID:acBaJVZBO

一週間、二週間……一ヶ月。



僕たちの交換日記は続いていた。



女『もうすぐこのノートも終わっちゃうね。新しいノート用意しておくから、心配しないでね?』



いつの間にか、そんなになっていたらしい。



女『もうすぐ運動会だね。意外と僕ちゃんの足が速かった事にとても驚いています』



日記の中の彼女は、とても素直に僕を誉めてくれている。



女『すぐに転んじゃう癖は、大学では見る事が出来なかったので新しい発見でもありました』



僕(……相変わらず下らない所ばかりよく見ているんだな)



僕(さて……)



僕はページを捲る。



次が最後のページみたいだ。



僕はまた鉛筆を取り出し、彼女への返事を書いていた。



家で唯一彼女を感じる事ができる、この時間が何よりの楽しみだ。





397:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/04(水)02:28:39.55ID:acBaJVZBO

まっさらに晴れた秋空。



陽射しは強いのに暑くは無いのは、朝から爽やかな風が吹いていたからだろうか。



『宣誓!僕たち』



『私たちは』



『練習の成果を十分に発揮し』



『戦う事を』



『誓います!』



僕(懐かしいなあ、選手宣誓なんて……)



ぎこちなくマイクに向かっている同級生の姿を、一人ニヤニヤしながら見つめている。



僕(いつもなら、横に並んでいる女から蹴りでも飛んでくるはずなんだけれど)



運動会の今日。



隣に彼女の姿は無い。





404:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/04(水)02:41:45.78ID:acBaJVZBO

女「ねえ僕ちゃん!」



黒板に書かれた、赤組と白組の組分け表。



それを見ながら興奮気味に話してきた彼女の姿。



そんな数日前を僕は思い出す。



僕「……何?」



女「ねね、見た。組分け表」



僕「見た、よ」



女「ん〜……元気無いのは、私と離ればなれの組になっちゃったからかな?」



僕「そんな事……」



女「照れるな照れるな〜」



僕(その慰め方は、多分おかしい)



赤組には彼女の名前、白組の部分には僕の名前が書かれている。



さらに悪いことに、僕以外はみんな赤組で……。



女「眼鏡ちゃんも隣君も、みんな赤組だもんね〜」





405:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/04(水)02:49:21.54ID:acBaJVZBO

僕「……で、何さ」



女「勝負だよ勝負!」



僕「勝負?」



女「私の赤が勝つか、僕の白ちゃんが勝つか……勝負だよ」



たまに彼女は、本当に子供のような考えで物事を考えて、言う。



僕(おまけに勝負事に関しては負けず嫌いの筋金の塊)



僕「勝負はいいけどさ、負けたら何してくれるのかな?」



女「んー……?」



僕「勝負事なら当然戦利品が何か無いと、ね」



僕もなかなか子供らしい性格をしている。



女「そうだね〜……」





406:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/04(水)03:01:14.92ID:acBaJVZBO

女「じゃあ、買った方が負けた方に駄菓子屋で五百円分!」



小学一年生の懐具合と、百円ですら贅沢ができる駄菓子屋での五百円分……。



僕「ちょっと豪勢すぎないか?」



女「負けるのが怖いのかな?」



僕「……そんな事ないよ。五百円を失う女が可哀想って思っただけだよ」



女「ふふん?」



僕「こういう楽しみ方も、いいのかもしれないな。よし、わかった」



勝負に合意した瞬間、彼女は元気に眼鏡ちゃんの元へ駆け寄っていく。



女「眼鏡ちゃ〜ん!僕ちゃんがね、運動会で負けたら私たち二人に五百円分のね……!」



……。



僕が負けた場合のみ、駄菓子屋では夏目漱石さんが消える約束になっているらしい。





407:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/04(水)03:10:57.36ID:acBaJVZBO

眼鏡「え……あたしにも?」



女「私たち赤組だからさ。頑張って僕ちゃんに勝とうね」



眼鏡「負けたらあたし、五百円なんて……」



女「僕ちゃんは私たち二人から奪うような真似なんてしないよ〜ね?」



グリン、と彼女の首がこっちに向き直る。



僕(勝手にしてくれ)



僕は大人らしく、呆れた笑顔で頷いてあげた。



女「やったね!じゃあ早速今日の練習を頑張って……」



先生「あの、女ちゃん。ちょっといい?」



女「あれ、先生?どうしたんですか?」



はしゃぐ彼女に、先生が話しかけている。



僕(……何だろう?)





408:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/04(水)03:19:38.34ID:acBaJVZBO

女「わ、私が選手宣誓……?」



先生「この学校だと、宣誓は一年生がやる事になってるの」



女「なんで私なんですか!あ、ぼ、僕君を推薦します!」



僕(やっぱりそう来たか)



先生「毎年、出席番号一番の子が……ね?それに男子の一番は僕ちゃんじゃないし……」



女「せ、宣誓なんて私……」



眼鏡「が、頑張って女ちゃん……」



女「め、眼鏡ちゃん?」



眼鏡「女ちゃん、元気だしきっと上手くできるよ、ね?」



女「んー……」



女「わかりましたよ。先生、私やります」



眼鏡「女ちゃん……!」



先生「良かった。じゃあ放課後隣君と職員室に来てね。練習しましょう」





409:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/04(水)03:31:57.23ID:acBaJVZBO

……。



『一年生代表、隣君に女ちゃんでした。では次に……』



前の方から、フラフラとした赤面の女が戻ってくる。



そんな彼女を慰めるように、僕はヒソヒソと声をかけてあげた。



僕「よ、名演説」



女「……うるさいバカ!」



ドボッ。



ヒソヒソした返事と一緒に、左の脇腹にフックが飛んでくる。

僕「っぐ……」



女「……プンだ」



僕「てっきり蹴りが来ると思い衝撃に備えていた物を……」



女「何?走る前に足ケガしたいの?」



僕「いーえ。滅相も」



女「プイッ」



彼女はそっぽを向いたまま。



僕はそっぽ向く彼女を見つめたまま……秋の運動会が始まる。





410:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/04(水)03:43:34.71ID:acBaJVZBO

グラウンドで行われている競技は、そのどれもが僕の記憶には残っていなかった。



玉入れ、借り物競争、クラス全体で踊るという出し物のような物まで。



十何年前、確かに僕はここに居たんだろうけど……。



女「どう、懐かしい?」



僕(綺麗なくらいにまっさらな記憶しか無い……いや、記憶が無い)



僕「ハァ……せめて結果だけでも覚えていれば安心も出来たのに」



女「あははっ、やっぱり記憶にないんだね」



眼鏡「き、記憶?」



女「っ!このバカー」



眼鏡ちゃんに聞こえていた事に驚き、力無く彼女が僕の頬を叩いてくる。



僕(……今のは悪くないのに)



女「あ、赤勝て赤勝て〜」



彼女は何事も無かったかのように、グラウンドの何かを応援していた。





411:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/04(水)03:55:00.25ID:acBaJVZBO

種目もそこそこに、午前のプログラムが終了する。



今のところ得点に大差は無い。



勝負は午後の種目で、と言う事になりそうだ。



僕「そのためにも、ご飯ご飯」



眼鏡「じゃあ……また後でね」



僕「また後でねー」



お昼の時間はグラウンドの周りで応援してくれている親の所で食べる事になっている。



僕「じゃあ、女もまた後で」



女「あ……うん。また、ね」



僕(?)



お昼の時間だと言うのに、彼女には先ほどの元気が無い。



いや、元気のカケラも無い。



女「ご飯だもん……ね」





412:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/04(水)04:02:24.50ID:acBaJVZBO

僕(ご飯だよ?体力回復しないと午後倒れちゃうよ?)



この声のかけ方は違うか。



僕(早くお父さんとお母さんの所に……)



僕(あ……お母さん?)



女「……」



普段は元気で明るい彼女を見ているから気付かなかったけれど……。



家にいる時間を殆ど一人で過ごしている、それを忘れていた。



多くの音がしない小さな家に女の子が一人きりで、僕との日記を笑顔で書いている。



笑顔?



彼女は本当に僕の日記を笑顔で見つめているのかな?



泣きながら日記を書いていた日も……あったんじゃないのかな?



女「……」



そう考えてしまった瞬間、目の前で下を向いている彼女を、堪らなく何とかしてあげたかった。



僕「……行こうよ」





413:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/04(水)04:10:10.65ID:acBaJVZBO

女「えっ?」



僕「お弁当、そのカバンに入ってる?」



女「う、うん。あるけど……」



僕「よしっ」



その言葉を聞いて、僕は彼女が抱えているカバンを雑な感じで取り上げる。



女「えっ……なに?なに?」



僕「行こうよ」



今度は戸惑っている彼女の左手首を僕の右手が掴む。



……傷付けないように気持ち優しく力を入れた。



それでいて、少し緊張しながらグラウンドを早足で横切っていく。



女「ど、どこ行くの!」



僕「僕のお家でご飯食べるの」



こんな言葉遣いになっているのは、心臓がドクドク言っているせいだ。







414:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/04(水)04:18:52.78ID:acBaJVZBO

女「お、お家って?」



僕「……ぼ、僕の家族とご飯食べればいいよ!」



何をツッコまれても今は関係無い。



ただ彼女の手をとって、どんどん前へ進んでいる。



女「で、でも迷惑だよ……いきなり他人の子が一緒にご飯なんて……」



僕「何とか言うから大丈夫だよ。それに一人だと、ご飯美味しくないからさ」



女「僕ちゃん……」



ますます心臓が早くなっている。



今朝はあんなに涼しかったはずなのに、今の僕の体温はきっと温かい。



僕「ほ、ほら。一人で食べるより女と食べる方が美味しいよ、きっと……ね?」



違う、これは僕の事だ。



僕(彼女に言う言葉じゃない……)



女「ありがとう……僕ちゃん」

ギュッ。





416:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/04(水)04:28:41.38ID:acBaJVZBO

いつの間にか、彼女の手首は左手に変化したかのように僕の右手を握っている。



既にお昼が始まっていて、誰もいないグラウンドの真ん中を僕たちは歩いていた。



彼女と二人、たくさんの人の中心に僕たちはいる。



ちいさなちいさな恋人達が、仲良くご飯に向かって歩いている。



今だけは誰かにそんな風に見られてもよかった。



僕「……言い忘れ」



女「?」



僕「一緒にお昼……食べよう?」



女「うんっ!」



僕たちは、もう一度力強くお互いの手を握った。





418:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/04(水)04:41:49.02ID:acBaJVZBO

僕「……と言うわけでさ。彼女も一緒に、ね」



母「うん、女ちゃんも一緒に食べましょう」



父「じゃあ、早く座ってもらいなさい」



妹「おねーちゃん。おねーちゃん」



女「お、お邪魔します」



父も母も基本は優しい。



昔はかなりオープンな性格だったと記憶している。



僕(昔……ね)



母「量はたくさん作って来たから、たくさん食べてね?女ちゃんも」



女「あ、ありがとうございます……」



ちょっと丸まるようにお礼を言う彼女がいる。



よかった、彼女が笑顔でお昼を迎える事ができて。





419:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/04(水)04:48:56.64ID:acBaJVZBO

借りてきた子猫のように大人しい彼女。



パクパクと夢中でお弁当を食べている。



僕(普段の元気な彼女に比べて、ちょっとギャップ萌え)



僕(ん……萌えやツンデレってこの年には言葉として存在していたのかな?)



お弁当を食べる彼女を見つめながら、そんな下らない事ばかりを考える。



僕(何か考えてないと……彼女に見とれすぎているのがバレてしまうから……)



妹「おーちゃんまっかー」



僕「……いいの、妹ちゃん」





420:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/04(水)04:53:26.54ID:acBaJVZBO

母「うふふっ。女の子が一緒ですものね」



父「ははっ、緊張してるか。ほら、ビデオ撮るから二人ともこっち向いて笑って〜」



僕「……ブフォッ!ケホッ、ケホッ……」



女「汚いよ僕くん……はい、麦茶」



僕(と、父さんのビデオを撮る癖を忘れていた……)



こうして彼女と並んでいる所が記録に残ってしまうのかと思うと、余計に顔が赤くなる。



妹「おーちゃんまっかー」



僕「……朝からずっと撮ってたの?」



父「開会式から今まで、バッチリだよ」



僕「ふ〜ん……」



開会式から、という事を聞いて僕の笑顔は彼女に向く。



彼女「?」



僕「じゃあ選手宣誓の所も録画した?」



彼女「!」





421:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/04(水)05:04:19.07ID:acBaJVZBO

父「あー、そう言えば女ちゃんがやってたんだね。ごめん、そこは撮ってなかったよ」



女「……ホッ」



彼女は安心一息、麦茶を飲み始めている。



僕「残念」



父「あ、撮ってないのは選手だよ。僕の事はずっと撮ってたから」



僕「ふ〜ん。女が宣誓している所をもう一度見て笑いたかったのに」



キッ、と麦茶を飲みながら彼女は睨んでくる。



僕「〜♪」



家族の手前、叩かれないという安心感があるのは素晴らしい。





422:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/04(水)05:09:08.28ID:acBaJVZBO

父「……あ、そう言えば僕、誰かに叩かれてなかったか?ちょっとカメラのズーム遅れて見えなかったんだけど……」



女「ブファ!」



僕「……」



顔面に生ぬるい麦茶が勢いよく吹き掛かかる。



妹がそれを見て笑っている。



隣で彼女が謝っているようだったが、それ以外の言葉は僕の記憶には残っていない。



僕(……あとで記録のビデオを見直す事にしよう)



麦茶を吹き出し、慌てながら謝っている彼女の顔も、きっと可愛らしいんだろう。



太陽が高くにある……。



彼女と一緒に楽しくお昼ご飯を食べた。



それだけで僕は、午後種目だって頑張って行ける。





423:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/04(水)05:17:58.46ID:acBaJVZBO

眼鏡「あ……お帰り、二人とも」



僕「ただいま!」



女「……ただいま」



眼鏡「お、女ちゃん?顔色悪い?」



僕「ちょっと、麦茶を飲みすぎたみたいだよ」



女「恥ずかしい所を見られたの……」



眼鏡「そんなの気にする事ないよ。体動かせばちゃんと消化だって、ね?」



女「んー……」



何も言えない弱った彼女を見るのも、たまにはいいものだ。



僕「いやあ、だってさ女」



女「……ムカッ」



僕「今度は人の顔面に吐き出さないようにさ。あ、僕の水筒飲む?」



女「調子にのんなバカ僕!」



バッチン!





424:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/04(水)05:34:50.38ID:acBaJVZBO

ビンタで気合いを入れ直された僕とは対照的に、午後になって赤組は白組に後れをとっている。



僕(得点差が酷い……)



しかもグラウンドで今行われている、上級生による棒倒しだって。



最初は優勢だったものの、後半は体力が切れたのかジリジリと押し返され始めていた。



僕(このままでは……)



焦る僕の後ろ嬉々とした声が聞こえてくる。



女「眼鏡ちゃん。五百円だよ〜。いつもは我慢していた高級なチョコがいっぱい買えちゃうんだよ〜」





425:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/04(水)05:44:02.42ID:acBaJVZBO

眼鏡「あ、あたしは当たり付きのきな粉棒を全部買ってみたいかも……」



女「あ、いいねそれ。大人買い〜」



眼鏡「えへへっ」



僕(眼鏡ちゃんが結構エグい……。買い占めが夢ってあんた……)



僕「が、頑張れ赤ー!」



精一杯の声援を僕は送る。



『あっ、赤組。逆転です!白組の棒を見事先に倒しました!』



『いやあギリギリの戦いでした。お互いの守備がほぼ同時に崩れましたが……これで赤組、点差を縮めます』



僕「いよっし」



女「……チッ」



眼鏡「……あ、ねえ。次が最後の競技だよ。私たちも並ばないと」



女「あ、そうだったわね。確か最後は……」



隣「……全校生リレーだよ」





426:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/04(水)05:53:36.10ID:acBaJVZBO

女「あ、隣君。そう言えばそうだったね」



眼鏡「あたし、走るの苦手だから……」



隣「お、俺が頑張って走るから」



女「あら、隣君って走るの速かったっけ?」



僕(こっちを見ないでくれ。あまり記憶に無い……)



隣「は、速いよ!僕君よりはずっと速い!」



僕の方に向いている彼女の視線を奪いたい。

注目して欲しい。

そして何より僕への当て付けで。



隣は大きな声を出して彼女にアピールをしている。



女「……ふふっ。頑張ろうね」



眼鏡「う、うん」



隣「お、俺……が、頑張るよ!」



僕も負けるつもりはない。



でも、違う組だから彼女からの声援が聞こえない。



それだけが少し寂しかった。





428:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/04(水)06:12:52.70ID:acBaJVZBO

『位置について……よーい……』



パァン!



もう太陽が夕焼けに変わる頃。



耳に響きすぎるくらいの銃声が僕たちの上を駆け抜ける。



同時に、六人のランナーがスタートラインから一斉に飛び出して行く。



最後のリレーでは、赤組と白組のメンバー三人づつ同時に走っていく。



もちろん全学年、全ての人間が走るんだけれど……。



この学校ではアンカーを走る学年は一年生か六年生だ。



それはローテーションで毎年変わっている。



去年が六年生だったらしく、今年は僕たち一年生がアンカーを走る事になってる。



つまり、六年生からスタートして五年生、四年生……最後に僕たち一年生の出番となる。



『いよいよリレーがスタートしました。勝つのはどちらでしょうか……まずは白組リードです。頑張って下さい』







429:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/04(水)06:33:52.56ID:acBaJVZBO

「頑張れー!頑張れー!」



「走れー、抜けー」



体の大きな六年生が力強くトラックを走っている。



周りからは頭が割れそうなくらいにみんなの歓声が響き、エールが送られている。





そして、スピーカーから流れるどこかで聴いた事があるクラシック音楽で、僕たちの興奮が更に昇華した物になる。



(天国と地獄?剣の舞だっけ?)



曲名は忘れてしまったけれど、確かそんなような名前の曲だった気がする。



『ここまでで、白組リードです。次はいよいよ三年にバトンが渡ります。赤、頑張れ〜』



一瞬、また一瞬。



出番が近付いてくる。



僕は興奮から、自分のアンカーたすきを強くギュッと握りしめていた。



自然と手が武者震いを起こしてしまう。





430:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/04(水)06:46:28.33ID:acBaJVZBO

『最後は一年生です。小さな体で精一杯走ります。お母さん、お父さんもたくさん応援して下さい』



放送の声が、僕たちにスタートを告げている。



ここまで、一位と二位は白組が独占している状態だ。



点差から考えると一位だけでも二位だけでも届きそうに無いのはわかっている。



赤組が優勝するためには、最低でも僕が二位……できれば一位でゴールするしかない。



僕(ち、ちょっとだけ緊張するな)



僕の中の精一杯の強がりだ。



僕(お、女は……えっと……)





432:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/04(水)06:57:50.48ID:acBaJVZBO

何かにすがるように僕は彼女を探し出す。



彼女は僕たちが待機しているのとは反対側……。



トラックを半周した辺りをちょうど走っている所だった。



僕(うん。頑張れ女……)



そっと心の中でエールだけを送る。



一生懸命に全力で、力一杯走っている彼女の姿を大学で見る機会なんて、絶対に無い。



僕「……よしっ!」



また強く、強くたすきを僕は握る。





433:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/04(水)07:10:02.10ID:acBaJVZBO

グラウンドを駆け抜けていく少女。



綺麗に伸びている彼女の黒髪が……走る呼吸と体の動きに合わせてスローモーションに揺れている。





胸の奥の心臓が、そんな彼女の姿を見てドキドキし始めている。



小学校の時の僕は、いつもこんなにドキドキしていただろうか?



彼女の事に限らず……。



いなくても、それは多分……。



そうだよ、運動会のこの時が来る度、きっとドキドキしていたんだろう。



僕はそんな秋の思い出を、記憶から消し去っている。



僕(ああ、これが忘れているっていう事なのかなあ……)





434:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/04(水)07:19:18.37ID:acBaJVZBO

女「はあっ……はあ……疲れたぁ……」



息を切らせた彼女が視界に入ってきても、僕の意識はどこか昔に置いてかれていた。



女「ふふ、この頑張りでしろ……ぐみのっ……勝ちはっ……」



眼鏡「ま、まずは息を整えないと。ね……?」



先に走り終えていた眼鏡ちゃんが、背中を擦ってあげている。



女の表情が落ち着き、段々と呼吸が整っていくのがわかる。



女「はぁ……ふっ。相変わらず白組が上位を……って、聞いてるの?僕ちゃん?」



僕「ん……」



女「まったく。アンカーがそんなんじゃ勝てないわよ?」



僕「いや、ちょっと昔の事が頭に……」



女「何か記憶が戻ったの?」



彼女はちょっと声を落として僕に話しかけてくる。





435:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/04(水)07:29:20.53ID:acBaJVZBO

僕「昔はいっぱいドキドキしていたんだなあ、って」



女「……それだけ?」



僕「うん。女の走っている姿を見てたら、なんかそんな事を思い出しちゃってさ」



女「……ハァ。記憶じゃないんだね」



僕「えへへ」



女「可愛く笑ってもダメ。アンカーなんだから……シャキッとしなよ?」



僕「あ、応援してくれるの?」



女「……」



チラリ、と彼女はランナー達を見る。



トップ集団と距離に大差があるわけではないが、赤組は三、四、五位を団子状態で走っている所だった。



女「このまま楽勝でも面白くないから……頑張ってくらいは言ってあげる」





436:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/04(水)07:44:27.47ID:acBaJVZBO

僕「本当?女が応援してくれたら、僕優勝しちゃうよ?」



少しだけ調子にのった僕を、またいつもの笑顔が受け入れてくれる。



女「くすっ……私もドキドキさせてくれるなら、いいよ別に」



女「さっきの話じゃないけど……私も走っていてドキドキしていたから、ちょっと気持ちわかるんだ」



走ったドキドキから照れているかのような……そんな印象を僕は受ける。



彼女の頬が、いつか一緒に食べたリンゴ飴みたいに赤くなっていたのを僕は覚えている。





438:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/04(水)07:52:24.07ID:acBaJVZBO

女「じゃあ……頑張って僕ちゃん!思いきって優勝しちゃえ〜」



僕「うんっ!行ってくるよ女!」



彼女の名前を大声で叫ぶ。



女「頑張って!」



彼女の声だけで、僕は誰よりも速く走る事が出来て、どんなに遠くまでも行く事ができる。



そんな気がした。



そんな気が……していたんだ。



僕(女……頑張るからね)







でも僕は確か……ゴールする事が出来なかったんだ。



その記憶を、走る前の僕は思い出していない。



ただひたすら、一人で泣いていたその記憶を僕は……。



僕は忘れている。





440:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/04(水)08:06:26.35ID:acBaJVZBO

隣「……負けないから」



スタートラインに立った僕に話しかけて来たのは、白組アンカーの隣だった。



明らかに僕をライバル視している。



僕(僕はただ彼女のドキドキのために走るだけだよ)



運動会という開放的な場でなければ間違いなく言えないようなセリフだ。



僕(あれ、でも結構そんな事言っていたかな?)



隣「む、無視するなよ!」



まあいいか、と思う僕に、体をズイッと強引に寄せてくる隣。



身長は僕より大きいから迫力はあるけれど、今の僕は気迫だけで下がる僕ではない。



僕「……僕は優勝しなくちゃいけないんだよ。女のためにさ」



運動会は男の子をヒーローにさせる。



これくらいとんでもないセリフを言っても今日は許される事だろう。





441:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/04(水)08:18:26.29ID:acBaJVZBO

女……。



彼女の名前を出したのがいけなかったのか、隣の表情がみるみるうちに激昂した様子に変わる。



隣「ば、馬鹿だな。女ちゃんは白組だよーだ!」



僕(そういう事じゃないんだよ……)



今の隣にそれを言ってもわかるわけはないだろうが。



僕「組とか関係ないよ。僕は彼女のために走るんだ」



隣「い……言ったな!それじゃあ俺だって……俺だって!」



隣「こ……このリレーで勝った方が女とつ、つき……付き合うんだ!」



僕「……は?」



とんでもない僕のセリフを引き金に、隣もとんでもない事を言い出した。



一年生とはこんなにも唐突に唐突な事を言うもんだっただろうか?



僕「そ、そんなのいいわけないだろ!」





442:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/04(水)08:30:43.67ID:acBaJVZBO

隣「ダメだ。勝った方が告白するんだ!」



話の内容が安定しない、が、そんな事を彼女の同意無しで決められるわけは無い。



同意があればいいと言う事でもないけれど。



僕(そんな約束できるか……)



彼女が絡んでしまうと、自然と僕は動揺してしまう。



自分ながら変な感覚だ。



隣「……フン」



僕「ち、ちょっとま……」



僕の言葉が、目の前を走り去るランナーにかき消されていく。

『白組、アンカーにバトンが渡りました。隣君、頑張って下さいね』







443:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/04(水)08:43:57.63ID:acBaJVZBO

一位で飛び出した彼は、元気よく、僕を後ろに蹴るように走っている。



僕(……)



僕(……)



『赤組。必死の追い上げでバトンがアンカーに渡ります。僕君、一位になれるよう頑張ってね』



僕はバトンを受け取り、本当に久しぶりに……。



何も考えずに全力で地面を走った。



スタート。



走り出した瞬間から、夕焼けの光が視界いっぱいに拡がっていく。



その光の中に、第一コーナーを曲がる隣の背中……大丈夫、まだ追い付ける。



足の重心がブレないよう、腰と膝、足裏に意識をちょっとだけ向けてコーナーを曲がる。



あくまでも無意識に。



それでいて下半身に感覚を集中させながら。





444:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/04(水)08:52:53.65ID:acBaJVZBO

コーナーを曲がり終え、体の向きが変わり長い直線に差し掛かる。



『赤組、後ろから追い付いて来ています。その差僅かです』



隣はそんなに走るのが速くなかったようだ。



視界が広くなった直線で、隣の背中がどんどん近付いているのがわかる。



僕(直線、また大きく第二コーナーを曲がって……真っ直ぐ走れば終わりだ)



グングン、グングン。



距離を走れば走るだけ僕は隣に追い付いている。



彼女が応援してくれたから、僕は負けない。



負けられないんだ。



直線の最後で、僕は隣に並ぶ。



僕は、彼を見ない。



ただ歯を食いしばって、全力で今を走っている。



僕は、すっごくドキドキしていた。



ドキドキしていたんだと思う。





446:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/04(水)09:01:11.14ID:acBaJVZBO

隣「はあっ……はあっ……!」



コーナーの真ん中辺りで一度だけ、隣の呼吸が聞こえてくる。



かろうじてだが、インに入ったのは隣だ。



その分まだ並んではいるが……スピードも体力も、僕の方が勝っているんだ。



妹「おーちゃん、がんばえー」



父「いけ!いけ!」



母「僕〜!ファイト!」



眼鏡「が、がんばって〜……僕……ちゃん!」



……声が聞こえる。







447:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/04(水)09:12:16.67ID:acBaJVZBO

僕を応援してくれるみんなの声が。



もうそこは、コーナーが途切れる一歩前。



再び夕焼けの光が僕を照らす。



オレンジ色の世界の中で、僕はそっと耳をすます。



一番聞きたい彼女の声を、僕は光の中で聞こうとしていた。



……。



ああ、聞こえる。



光の中で、僕が一番聞きたい彼女の声が。



女「……いけえぇ!僕ちゃん!」



僕(ああ、やっぱり僕は……彼女がいるから頑張れるんだ)



コーナーが終わり、短い直線と……更にその先にゴールテープが見え始める。







448:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/04(水)09:18:36.28ID:acBaJVZBO

そのゴールテープを僕が走り抜ければ……赤組の優勝。



そして……。



僕(僕の……僕の勝ちなんだ!)



「っ……くそっ!」



何かが聞こえた瞬間、僕の世界が真っ暗になる。





グイッ!





(えっ)





……?



……。



ねえ。



僕はどうして地面に倒れているの?



どうして僕は……まだゴールテープの向こうにいないの?



どうして僕は……。



こんな所で転んでいるの……?









450:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/04(水)09:26:18.43ID:acBaJVZBO

『……でしま……た。……から……ぬかれ……かぐみ……かいに……』



放送の人が何かを言っている。



もう聞こえない。



クラスのみんなが何かを言っている。



聞こえない。



応援席の家族が何かを言っている。



聞こえない。



……。



もう、誰も何も喋らなくなったみたいだ。



本当に僕には何も聞こえなくなった。



いつの間にか、スピーカーから流れていたはずの天国と地獄も聞こえない。



僕はただ、彼女を声だけを聞きたい。



だからこうして地面に顔をくっつけたまま眠っている。



(ああ……思い出した。僕の記憶……)





451:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/04(水)09:35:27.81ID:acBaJVZBO

幼稚園の運動会で、僕は同じように小さなトラックを走っていた。



最後の種目で僕の組が負けていて……前を走っていた誰か……隣じゃない誰かを夢中で追いかけていたんだ。



その時はリレーじゃなくて借り物競争だったのを覚えている。



しかし所詮は幼稚園児の借り物競争。



紙に書かれている物は全てコースの途中に置かれ用意されている。



走って、紙に書いてある物をマイクの前で読み上げて、物を拾ってゴールへ走る。



幼稚園ながら、しっかりとした競技だったと思う。



……。



僕は確かじょうろを借りたんだ。



用意されていたのは、子供用の小さいやつじゃない。



口が長くて、幼稚園児が扱うにはちょっとバランスの悪いじょうろだったのをよく覚えている。





452:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/04(水)09:46:23.21ID:acBaJVZBO

他のみんなは物を拾う時に、いちいち止まったりしてた。



でも僕は、走りながらじょうろを掴んで全力で誰かを追いかけていたんだ。



最後のコーナー……最後の直線。



僕は少し後ろに迫っていた。



視界にゴールテープが見えた直線で……相手を抜けるはずだった。



そこで一気に加速しようとした瞬間……僕のじょうろが彼に掴まれた。



長い口をしっかりと握っていた手のせいで、僕はバランスを崩してしまい……。



泣いている僕を先生たちが抱き起こして、親の所へ連れていってくれたのを覚えている。



僕は、ゴールする事が出来なかった。



先生が来てくれるまでの間、ずっと一人で僕は泣いていた。



……。





454:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/04(水)09:58:06.43ID:acBaJVZBO

今の僕は泣いていない。



僕は大人だから。



一年生だけど一年生じゃないから。



ただ地面に突っ伏して、昔の記憶だけを思い返している。



幼稚園の記憶……今の僕も同じ事を幼稚園で経験したんだろうか。



経験していないなら、今日がその時なのかな。



もう何でもいい。



僕は負けてしまった。



あとは先生が僕を起こして、ゴールしないまま運動会が終わる。



本当にそれだけ。





456:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/04(水)10:06:52.59ID:acBaJVZBO

「……」



足音がした。誰かが僕の元へ駆け寄ってくる。



こうして地面に耳をくっつけているとそれがよくわかる。



頬にくっついている石灰の線がヒンヤリとして気持ちいい。



「……」



「転んじゃったね」



先生じゃない。



僕の記憶と違う。





457:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/04(水)10:09:59.96ID:acBaJVZBO

「でも僕ちゃん、カッコよかったよ。すごく速くて……びっくりした」



(やめてよ)



「ちゃんとドキドキもしたしさ。それに見ていて楽しかったよ、ありがとう」



(ダメなんだ、話しかけられると)



「ね……早くゴールしてさ、駄菓子屋行こうよ。何でも買ってあげるから、ね」



(子供扱いしないで)



「なんで起き上がってくれないの……?」



(だって君の声を聞いたら僕は)



「ねえ、どうしてそんなに泣いて……いるの?」



(僕は泣いちゃう、から……)





458:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/04(水)10:18:47.74ID:acBaJVZBO

「っく……ひっく……うっ……」



「やっと立ってくれた。大丈夫?」



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